心の旅

この旅の道づれは
変わらない自分
どこまで行くのかは
たどり着いたとき
わかるのか


メロ付きはこちら↓
♪風のユリカゴ♪

何度も洗って肌触りの良くなったコットン・パンツにスニーカー。
薄手のシャツの上に軽いコートを羽織り、2泊ぐらいの着替えが入ったバッグのポケットにはウイスキーのポケットビン。
電車に乗り込むと、案外席は空いていて、進行方向を向くようにしてボックス席の窓際に座る。
都会を抜け、窓の外の景色が開けた頃に、カバーも無く、表紙がすっかり反り返ってしまっている文庫本を読み始める。
宿に着くと、座布団を二つに折って枕にし、本の続きを読みながら、時々ウイスキーを舐める‥‥

昔、ウイスキーのコマーシャルで見たシーンに影響されているのか、オレにとっての一人旅のイメージだ。
理由はあっても無くてもいい。できれば知らない街がいいだろう。
メロディーや歌詞が浮かんでは消えるままにして‥‥

ところが‥
オレは一人旅をしたことが無い。
「本当か?」
ちょっと考えてみたのだけれど、無いと思う。
つまり、最初に書いた「一人旅」のイメージは、何年もの間持ち続けている「憧れ」で、オレは小さな窓から見える空や、旅番組の景色や、映画の1シーンなんかをミックスして想像しているだけなのだ。
言っているのは「一人旅」で、別に旅をしたことが無いわけではない(言うまでもないだろうけど)。日本国内でも殆どの県に降り立っているし、海外も何カ国かはあるわけで‥。でも、旅行は誰かと一緒だし、一人で旅をした事があっても、それは冠婚葬祭であったり、仕事であったりが目的で、「一人で旅をする事」が目的の旅ではない。
ただ、一人でどこかへ行く際には、その目的以外の時間に「一人旅気分」を十分味わうようにしている。
たとえば、飛行機よりも電車を選んで、駅弁を車内で食べるし、早い時間でも酒を飲む。そして、泣きながら本を読んだり、音楽を聴きながら居眠りをしたりする。
寅さんのように、誰かから冷凍ミカンを貰ったりしちゃうのも大歓迎だ。
目的地では必ず一人で飲みに出る。ホテルの場合は最初にホテル内のバーに行き、その街が、またはオレの方が馴染んでくるのを静かに待つ。
そして「なあーんにも無いなぁ」というような所でも、鼻を利かせながら酒場を見つけに出かける。大抵の場合は何かしらあるものだ。酒場がなければラーメン屋でも蕎麦屋でもいい。

そして、つかの間の「一人旅気分」を味わいながら、帰り道には呟きと共に、何かを許してしまう。


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